タイのお坊さんは、いつでも、どこでも、普段着だ。
托鉢をする時も、食事をとる時も、外出する時も、瞑想する時も、みんな同じ衣を着て過ごす。
かしこまった儀式の時も、信者さんのお宅でお経を読む時も、いつもの衣をいつも通りに着て過ごす。
身分も位も年齢も全く関係がない。
みんなおんなじだ。
・・・というよりも、いつもの衣しかないのであるから、いつもの通りに着て過ごすしかないという表現の方が正しいのだろうか。
身分も位も年齢も全く関係がない。
みんなおんなじだ。
・・・というよりも、いつもの衣しかないのであるから、いつもの通りに着て過ごすしかないという表現の方が正しいのだろうか。
・・・あるいは、正装しかないのだから“いつも正装のタイのお坊さん”という表現の方が正しいのだろうか。
ともあれ、どこへ行くにも、この衣ひとつなのだから、非常にわかりやすいし、迷うことがない。
身も心もとても軽いのだ。
比丘や沙弥は、出家の際に必ず持たされる資具がある。
そのひとつがこの「衣」だ。
出家者である限りは、常にこの衣を着用しなければならない。
もうひとつ必ず持たされる資具がある。
それが「針」と「糸」だ。
これは、現在でも出家式の際に必ず持たされるものである。
私が出家した時の針と糸。
今でも大切に私の部屋にしまってある。
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町のお寺では、なかば形式的なものとなってはいるが、森の修行寺では、今でも自分の衣が破れたり、穴が開いたりした時には、この針と糸を使って修繕する。
針と糸は、インド以来、出家生活上の必需品であり、所持することが許されてきたものである。
だからこそ出家式の際に衣と鉢とともに出家志願者には必ず持たされる資具のひとつとされているのだ。
ちなみに、比丘や沙弥がまとっている衣は、広げると長方形の一枚の布になる。
簡単に着崩れてしまうため、やや不便さを感じなくもないが、非常に便利なものでもある。
例えば、瞑想中には蚊よけのために羽織ったり、寒さを感じた時には上から軽くはおることもできる。
夜間には、ちょっとした掛布団代わりにもなるので、旅先などでは非常に役立った。
夜間には、ちょっとした掛布団代わりにもなるので、旅先などでは非常に役立った。
一枚の布なのにどこが破れるのかと思われそうであるが、意外にも、衣の縫い目が裂けて来たり、道端の茨(いばら)の枝に引っ掛けたりして衣が破れてしまうことがあるのだ。
なにせ、正装でもあり、普段着でもある衣であるのだから、日々生活をしていくなかでそれなりに傷んでくるというわけだ。
なにせ、正装でもあり、普段着でもある衣であるのだから、日々生活をしていくなかでそれなりに傷んでくるというわけだ。
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私が出家をした小さな森の修行寺にて。 |
私も何度もこの針と糸を使って自分の衣を縫った。
朝食後のゆっくりとした時間によく自分の衣を縫っていたことを懐かしく思い出す。
小学校で学んだことは、思っている以上に役立つものだ。
安居明けの行事において、衣を献上するという儀式があり、その際にお寺で衣を縫わないといけないため、ミシンや裁縫道具を常備しているお寺も多い。
そのため、どこのお寺へ行ったとしても裁縫関係の道具類に不自由することはない。
本来であれば、還俗の際に出家生活で使用していたものは全てお寺へ返却をしなければならない。
私は、還俗後、インドの仏跡巡拝の旅へと出かけ、その後に日本へと帰国している。
住職に還俗後にインドへ行くことを予定しているという話を伝えたところ、針と糸だけは持って行ってもよいという許可を得た。
衣類の修繕に必要だろうとのことで特別にいただいたものが画像の針と糸である。
結果的には、仏跡巡拝の旅でこの針と糸を使うことはなかったのだが、今でも私の部屋の片隅に大切にしまってある。
ほんのひと昔前までは、日本の日常生活の中においても、針と糸で自分の服を縫うのが当たり前だったはずだ。
出家生活で実際に使った針と糸を眺めながら、衣を縫っていた生活を懐かしんでいること自体が少々複雑な気持ちにさせられる。
タイと日本とでは、気候も風土も全く異なる。
決して同じような生活はできないだろうと思う。
決して同じような生活はできないだろうと思う。
しかし、私は、この飾らない、タイの出家生活のような非常にシンプルな生活がとても好きだ。
いつでも、どこでも普段着のタイのお坊さん。
思いを馳せるだけで、心が軽くなるようだ。
(『いつでもどこでも普段着のタイのお坊さん』)
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