「待ってくれー!」と叫ぶだろうか。
「おーい!!」と手を振るだろうか。
逆に、発車寸前、あともう一歩のところで乗れなかったということもあるかもしれない。
その時の悔しさは、なんとも表現しずらい感情だ。
いわゆる“駆け込み乗車”や“見送ってしまった”経験は、誰もが一度くらいはあるのではないかと思う。
タイでは、日本ほど鉄道は多くない。
そのため、バンコク以外の地方では鉄道を利用する機会はほとんどない。
おもな移動手段はバスだ。
比丘や沙弥達もバスを利用することがある。
私が“やってしまった”のは、バスに乗り遅れてしまった時だ。
記憶が確かであるならば、バンコク市内のとあるバス停でのことであったと思う。
恥ずかしながら、ついつい日本での感覚が出てしまったようだ。
出発しようとしているバスに向って思い切り走ってしまったのだ。
・・・思い切り走ったあげく、結局はそのバスに乗り遅れてしまったのだが。
この時、周囲の人達から随分と冷たい視線を感じた。
さらには、大層怪訝そうな顔をされた。
私は、並々ならぬ違和感を感じた。
だから、この時のことは鮮明に記憶に残っている。
だから、この時のことは鮮明に記憶に残っている。
バンコクのバスはとにかくわからない。
時刻表もない。
路線図や系統図もわからない。
そもそもバス停がないこともよくある。
私は、わからない時にはとにかく周囲にいる人に尋ねてみる。
本当に有難いことに、私はこの方法で、乗り間違えたり、目的地ではない町へ行ってしまったりという大きな失敗をしたことがない。
本当に有難いことに、私はこの方法で、乗り間違えたり、目的地ではない町へ行ってしまったりという大きな失敗をしたことがない。
「私もわからない」とは言いながらも、さらにその周囲にいる人達に聞いてくれたりしながら教えてくれたり、バスまで案内してくれたりする。
時には、人が集まってしまってちょっとした人だかりできてしまい、やっとのことで案内をしてもらったということもある。
このタイの人々の優しさと親切さには心打たれるばかりで、感謝の気持ちしかない。
しかしながら、私の方は実に必死な思いだ。
右も左もわからない街で、行き先も合っているのかどうかすら定かでないバスに乗る。
街の人でさえ、いつ来るのかもわからないバスを待つ。
もし、このバスを外してしまったら、もう来ないかもしれない。
そんなバスを見送るわけにはいかない。
街の人から「急げ!あれだ!あれに乗れ!!」と言われれば、これはもう走るしかない。
・・・ところが、これは後から知ったことであるが、この「走る」という行為がいけなかった。
道理で、冷たい視線を浴び、怪訝そうな顔をされるわけだ。
バンコク市内のバス
いろいろな種類のバスが走っている。
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タイのお坊さんは、走ってはならないのだ。
常に穏やかな顔をしていなければならないのである。
瞑想で言えば、それは、常に“サティ”を心がけていなければならないということであり、そうした姿勢を身につけるべき道を邁進するのが比丘であり沙弥であるからだ。
それもそうだろう。
修行者が取り乱していたらどうだ。
全く好ましくない行為だろう。
比丘や沙弥達は、どこにいようとも、何をしていようとも、常に穏やかな顔をしていなければならないのだ。
それは、バスに乗る時であっても然り。
常に穏やかな顔をしてバスへ乗り込み、静かに座っていなければならず、常に自己を観察していなければならないのである。
これは、出家生活の中での話であるが、日常の生活においてもこれと同様のことが言えるのではないかと思う。
感情を露わにしたり、取り乱してしまうような行為は望ましくない。
ただ変な「癖」をつけてしまうだけだろう。
この時のように、常に静かで穏やかな顔で過ごしていられるように努めたいと思う。
自己の行為を常に見つめながら過ごしていれば、自然にそうした穏やかな顔になれるのであろうが、それはすぐに成し得ることができるものではない。
だからこそ、感情がどんなに揺れ動こうともそれを見つめ、常に穏やかな顔で過ごすように努めていなければならないのだろう。
そうすれば、逆に心の方が整ってくるというものである。
今となっては懐かしい私のやってしまった談だ。
このことを思い出したのも何かの縁。
明日からどんな時も穏やかな顔でいられるよう努めていきたいと思う。
(『やってしまった談~街のなかで走る~』)
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