タイ佛教修学記

佛法を求めてタイで出家した時のこと、出会った人々、 体験と学び、そして心の変遷と私の生き方です。


礼拝

阿羅漢であり正等覚者であるかの世尊を礼拝いたします

ナモータッサ ・ パカワトー ・ アラハトー ・ サンマー・サンプッタッサ(3回)


2013/05/16

タイで出会った観音菩薩


タイにも観音様がいた。


仏教に少し詳しい方であれば「あれ?」と思ったのではないだろうか。


そう、実は上座仏教には観音菩薩は存在しない。


観音菩薩だけではない。

地蔵菩薩や弥勒菩薩もいない。


大乗仏教で説かれる諸菩薩は存在しないのだ。


上座仏教で「菩薩」といえば、釈迦の修行時代を指す。


ちなみに、「仏」といえば、釈迦のみを指す。

つまり、「菩薩」も「仏」も釈迦その人しかいないのである。



タイにはいないはずの観音菩薩は、実は華僑(タイに移住した中国人)によってもたらされた存在だ。


中国語由来のタイ語も多い。


タイは、華僑が大きな割合を占める国で、生活の中においても漢字をはじめ、中国に由来するものがたくさんあり、容易に目にすることがきる。


タイ文字に囲まれた中で見慣れた漢字の存在は、私達日本人にとっては、少しばかりの安心感を与えてくれる。



街には「廟」という華僑の祠が建てられている。

バンコクでは、大乗仏教寺院も存在する。



華僑の影響が強いタイ。

タイでは、さまざまな場所で観音菩薩を見かけることができる。



線香やロウソクのパッケージに描かれていることもある。

仏教書の裏表紙などに描かれていることもある。



それだけではない。


上座仏教寺院の境内や庭の一角に観音菩薩が祀られていることもあるのだ。


何の違和感もなくタイの生活の中に溶け込んでいる観音菩薩。



ところが、上座仏教の教義とは一切関係がないのだという。

また、比丘達が観音菩薩を拝むこともない。



そんな上座仏教とは一切関係のない観音菩薩が、どうして何の違和感もなくタイの生活の中に溶け込んでいるのか、日本人からするとなんとも不思議に思える。



観音菩薩は、上座仏教国であるタイにどのようにして広まっていったのか。

タイ仏教の中ではどのような位置で、どのように捉えられているのか・・・など、その興味は尽きない。



恥ずかしながら、不勉強なため、今後の詳しい専門的な研究を待つことにしたい。



さて、タイの観音様は、タイ人達の間でどのように信仰されているのであろうか?ということについて私の触れた人達とのエピソードから探ってみたい。



結論から言うと『神様』の一種として見なされ、信仰されている。



例えば、寺の一角に祀られているタイの神様を祀る祠と同じような存在として、観音菩薩が寺の一角に祀られていることがある。


主に在家の者達によって管理されているという。

やはり、僧侶は、それを礼拝することはしない。


これは、タイにおける『神様』の位置と同様だ。



関連記事⇒『タイの神様とお坊さん』



さらに、多くのタイ人が持つ『お守り』にもその性格がよく現れているように感じた。


親しくなったタイ人からある『お守り』を見せてもらった時のことである。



「とてもご利益のあるお守りがあるから見せてあげるよ。」



と、得意げに部屋の奥から出してきてくれた。


そのお守りは、何重も布にくるまれていた。

丁寧にくるんである布を少しずつほどいてくれる。


布の中から姿を現したのは、千手観音であった。

七宝でできたとても美しいお守りだ。



「いいだろう!すごくきれいだろう!」


「このお守りは、とてもご利益があるんだ。

お願い事を叶えてくれるし、守ってもくれるんだ。」



と言って、私に見せてくれた。

とても大切にしているようだ。


タイ人は、とてもお守りが好きである。

必ずと言っていいほどみんなお守りを持っている。



実にさまざまな種類のお守りがある。


その多くは、ブッダや高僧など仏教に関するものであるが、神様のお守りもある。


そんなお守りのひとつが『神様』としての観音菩薩なのであろう。



おそらく・・・



ブッダであっても、力のある高僧であっても、神様であっても、そして観音菩薩であっても、それはあまり関係がないのであろう。


何であってもご利益があればそれでよい。

ご利益があるからこそお守りなのだ。


ご利益があるものを信じる。

ご利益があるからこそ信じる。



それがタイの観音様という存在なのかもしれない。



タイの人々に受け入れられた観音菩薩。

タイの神様の一人となった観音菩薩。



タイの神様の一人となったからこそタイの仏教や神様とも何の違和感もなく共存できているのかもしれない。



きっとたくさんの人々の願い事や悩み事に寄り添ってきたことであろう。



ご利益があることこそが大切。

ご利益が人の心を惹きつける。



そんな心は、タイも日本も同じのようだ。



(『タイで出会った観音菩薩』)



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16 件のコメント:

ぷんぷく さんのコメント...

はじめまして。
タイに住んで十数年になる主婦です。夫はタイ人です。
タンマガーイについて調べていて、こちらのブログをたまたま見つけました。

主人の実家や親戚は、タイ仏教のため嫁となった私もタイのお寺にはよく一緒に行き行事などにも参加しています。
ただ、日本とは習慣など違うので、以前はとても戸惑うことも多く(今はさすがに慣れましたが)
タイの仏教についてわかりやすい解釈のサイトなどをずっと探していました。

今回偶然ですが、こちらのサイトに巡りあえ、とても嬉しく思っています。
これから少しずつ、勉強させて頂きますね。

Ito Masakazu さんのコメント...

はじめまして。ブログをお読みいただきましてありがとうございました。そして、コメントをいただきましてありがとうございます。

このようなことが知りたい、あるいはこういったことを記事にしてほしい・・・などといったご希望はありますでしょうか?そのようなお声がありましたら、ぜひともお聞かせください。自己の心を磨いていくこととともに、タイの仏教をわかりやすくご紹介できるようなサイトを目指していきたいと考えております。

さて、ワット・プラ・タンマカーイについては、ブログ内でも紹介させていただいております通り、タイ人のなかでも賛否両論があるグループです。近年、日本では『宗教法人タイ国タンマガーイ寺院』として日本各地(東京本院・大阪・長野・栃木・神奈川・茨城・埼玉・山梨・名古屋・群馬)に支部(サーカー)が建立されています。タイ国内では、もちろん『仏教』として認識されていますが、いろいろな意味で、特徴的なグループであると私は認識しております。

もし、ご意見・ご感想・ご質問等がございましたら、掲示してありますアドレスへお気軽にメールをいただけますと助かります。

今後ともよろしくお願いいたします。

かか さんのコメント...

タイなどのテーラワーダ仏教の国では、家族から出家者が出ると、その家族は喜ぶと聞いたことがある気がします。ブッダの視点から、どのような因果関係で家族は喜ぶのでしょうか。

Ito Masakazu さんのコメント...

ブログをお読みいただきましてありがとうございます。そして、コメントをいただきましてありがとうございます。

ご質問についてですが、それはサンガの維持の貢献につながる行いだからです。自己の心をよき方向へと導く行いは、その全てが自身の徳となります。また、他人をよき方向へと導くことも自己の徳となる行いにつながります。
ですから、ブッダの教えを守り伝えるサンガ、ブッダの教えを学ぶ場であるサンガ、そして自己をよき方向へと導く羅針盤となる存在であり、自己の拠り所となるサンガを守り、維持に貢献することは何より高い徳を積む行いとなるのです。

タイでは、「徳を積む」という価値観が生きています。家族から出家者を出すことは、出家者の両親のみならず、その家族にまで徳が及ぶものと考えられているため、親戚を挙げて出家を祝います。出家式の際に親類縁者を招待し、祝うのはそのような意味合いがあります。

今後ともよろしくお願いいたします。

かか さんのコメント...

出家にそのような徳があるとは知りませんでした。しかし論理的に教えて頂き、私にも少し分かることができ、ありがとうございました。

匿名 さんのコメント...

カンチャナブリのサイヨークにあるスナンタワナラーム寺院への行き方についてお願いします。

鉄道のナムトック駅からスナンタワナラーム寺院までどの方角に何キロくらいでしょうか?

ナムトック駅からスナンタワナラーム寺院まで、バスかタクシーで行けば良いのでしょうか?それとも徒歩で行けますか?

ナムトック駅周辺に1泊以上できる安い宿泊施設はありますか?

スナンタワナラーム寺院には何人くらい日本人僧の方がおられますか?

Ito Masakazu さんのコメント...

ブログをお読みいただきましてありがとうございます。そして、コメントをいただきましてありがとうございます。

ご質問についてですが、ナムトック駅からはバスかソンテウに乗り換えます。まだまだ離れているので、徒歩では行くことができる距離ではありません。トーンパプーム方面なのですが、場合によっては数回乗り継ぎが必要となります。
バスやソンテウの運転手の方には必ず、「ワット・パー・スナンタワナラームへ行きたい。」ということをはっきりと伝えておいてください。お寺の最寄りで降ろしてくれるはずです。逆に知らせておかないと、降ろしてくれませんので注意してください。
お寺は、バスが通っている幹線道路沿いにはなく、幹線道路から伸びる道の終点にあります。ですので、バスを降りてからは、歩くことになります。徒歩で30分から40分ほどの距離があります。
村の人を見かけたら、「ワット・パー・スナンタワナラームはこの道でいいですか?」と必ず確認をされるといいかと思います。

高速バス、路線バス、ソンテウ、トゥクトゥクなど、タイの乗り物を利用する時には、運転手に行き先を伝えておくことが重要です。

余談ですが、鉄道で行かなければなりませんか?特にご希望がないようでしたら、バンコクからでしたら、本数もあるのでバスで行かれたほうが便利です。
バンコク⇒(カンチャナブリー行きバス)⇒カンチャナブリー⇒バス、ソンテウを数回乗り継ぐ⇒お寺近くで下車⇒(徒歩)⇒お寺
となります。アクシデントも考慮して、まる一日見ておけば大丈夫かと思います。

カンチャナブリー、あるいはナムトック、サイヨークなどで、乗り換える時には「ワット・パースナンタワナラームへ行きたい」「プラ・イープンに会いたい」「アーチャン・カウェサコーに会いたい」「プラ・アーチャン・カウェサコー」
などの単語を伝えれば、「これに乗りなさい」と、どなたかが案内してくれますので、間違えることはないかと思います。
お寺の名前よりも、「プラ・イープン」や「アーチャン・カウェサコー」と伝えたほうがより確実かもしれません。タイでは、とても有名なお方ですので、カンチャナブリー県内でしたら、おそらくお寺のある場所までみなさんある程度は知っているはずです。

先述の通り、乗車の際、降りる際、降りてから、全ての場面で見かけた誰かに確認をするようにされると、迷うことはないかと思います。

お寺に滞在している日本人僧ですが、カベサコ師以外に、誰かは滞在されていることとは思いますが、常に流動的です。ですので、申し訳ございませんが、現在何人おられるのかははっきりとは存じません。

今後ともよろしくお願いいたします。

匿名 さんのコメント...

懇切丁寧にありがとうございます。
個人的には電車でもバスでもソンテウでも何でも構いません。
カベサコ師は還俗なされたとお聞きいたしました。
皆様が幸せでありますように。

匿名 さんのコメント...

出家にタイに行く時、日タイ辞典やタイ日辞典やタイ語の旅の指さし会話帳(もしくは類似書籍)は日本から持って行くべきとお考えでしょうか?それとも必要になった時、バンコクやカンチャナブリの本屋で購入可能ですか?それとも英語の辞書だけで最低限何とかなるものでしょうか?個人的に英語の辞書だけの方が荷物が少なく助かるのですが。

匿名 さんのコメント...

ワットパーポンやワットパナナチャは日本人が出家可能な環境にあると思われますか?

バンコク到着後、行く場所は決まってる時、30日間有効のノービザでも可能だと思われますか?

カベサコ師は健康問題だとお聞きいたしました。皆様が健康で幸福でありますように。

匿名 さんのコメント...

カベサコ師の冥想コースが9月に西日本であるようでございます(間違ってたらすみません)。今年の5月には一時帰国され、東日本で冥想コースをなされたみたいです(私は行けませんでした)。皆様が幸せでありますように。

Ito Masakazu さんのコメント...

ブログをお読みいただきましてありがとうございます。そして、コメントをいただきましてありがとうございます。

師がいらっしゃらなくとも、有名なお寺ですので、地元の方はご存知です。おそらく比較的容易に訪ねることができるでしょう。

日タイ・タイ日辞典は、タイ語を学習されていらっしゃるのでしたら非常に役に立つと思います。ご自身が一番使いやすいと感じるものを持参されることをおすすめいたします。

ワット・ノーンパーポンでしたらタイ語、ワット・パー・ナーナチャートでしたら英語が話せることが最低条件かと思われます。ご自身のタイ語や英語の語学力を考慮の上で進路を決められるとよいでしょう。

入国後30日以内で目的を完結できるのでしたら問題ないかと思います。

よきご縁がありますよう願っております。

今後ともよろしくお願いいたします。

匿名 さんのコメント...

回答頂き有難うございます。
皆様が幸福でありますように。

匿名 さんのコメント...

出家出来る回数についてお聞かせ頂きたいのですが。

どうしても家庭の事情、健康問題、経済的事情、その他の諸々の問題などで、還俗しなくてはいけない場合、再び自分の身辺整理をしてから再度出家出来ますか?複数回出家可能な場合、何回まで出家出来るという戒律や規則はありますか?

どうしても止むを得ない場合です。

Ito Masakazu さんのコメント...

再出家は可能です。

ただし、波羅夷罪(性的行為を行う・盗み・殺人を犯す・悟っていないのに悟ったと妄語する)を犯した者の再出家は許されません。

再出家は7回までできることと規定されています。しかし、必要以上に出家・還俗を繰り返すことは好ましいことではありません。

タイには、信頼できない人の象徴として「3回の出家男に離婚女」という諺があるそうです。
この言葉からも、むやみに出家・還俗を繰り返すことが好ましい行為ではないということがうかがえます。

匿名 さんのコメント...

返信遅れました。
有難う御座いました。