タイ佛教修学記

佛法を求めてタイで出家した時のこと、出会った人々、 体験と学び、そして心の変遷と私の生き方です。


礼拝

阿羅漢であり正等覚者であるかの世尊を礼拝いたします

ナモータッサ ・ パカワトー ・ アラハトー ・ サンマー・サンプッタッサ(3回)


2022/02/19

マーカブーチャー(万仏節)に思う

 

タイでは、先日、「マーカブーチャー」という仏教行事があった。


タイの祝日のひとつにもなっている年間で指折りの大きな仏教行事だ。


「マーカブーチャー」とは、ブッダの弟子が1250人集ったことを祝うもので、漢字では「万仏節」と表記される。


このほか、ブッダの生誕・成道・涅槃を祝う日で、漢字では「仏誕節」と表記される「ウィサーカブーチャー」、ブッダが最初の説法をして5人の弟子ができ、三宝(仏・法・僧)が揃ったことを祝う日で、漢字で「三宝節」と表記される「アーサーラハブーチャー」がある。


これらは、タイ以外のテーラワーダ仏教諸国においても国の祝日とされている。











さて、これらの仏教行事では、一体、どのようなことが行われるのであろうか。


タイでは、一種の“お祭り”ではあるが、日本人がイメージするようなお祭りとは、少々異なるものである。


日本で“お祭り”と言えば、屋台や出店がたくさん並び、とても楽しいものを想像するだろうか。


あるいは、飲めや歌えやの賑やかなものであろうか。


そこは、タイも似た一面はあるのだが(とは言っても、酒は絶対に出ない)、あくまでもタイ人にとっては、それが目的ではない。



これらの仏教行事では何が行われるのか言うと、蠟燭を持って仏塔やお堂の周囲を3周まわる「ウィエンティエン」を行う。


あるいは、サンガや比丘に対して日用品などのお布施を行う。


さらに、お寺で説法を聴いたり、瞑想を行うのだ。


おおむねどこのお寺においても、これらのことを行うのが仏教行事なのである。



どうだろうか・・・日本人ならば、”お祭り”なのに、全く楽しくないではないか!と落胆するだろうか。


しかし、タイ人にとっては、これらの全てが徳を積む行為であり、お寺へと足を運ぶこと自体が喜びとなる行いであり、楽しみとなる行いなのである。



私は、「観光」としての娯楽的要素と、「信仰」としての精神的歓喜の要素が一体となった、喜びであり楽しみである、大変素晴らしいものであると理解している。


「観光」と「信仰」とを兼ね備えているのだから、喜びは倍増だろう。











さて、これは、タイのごく一般的なお寺での話である。


瞑想系の修行寺もお寺はお寺なので、もちろん同じではあるのだが、ほんの少しだけ異なる。


非常に静かであるというか、大変厳かに行われるのだ。


蝋燭を持って仏塔やお堂の周囲を3周まわる「ウィエンティエン」も、街のお寺のような派手さや賑やかさはない。


特筆しておくべきは、比丘の説法や瞑想の割合が増えるということだ。


厳しい森林僧院などでは、仏教行事の日は、夜通し説法や瞑想が行われ、在家者も出家者も徹夜で瞑想する。


この説法や瞑想の割合が増えるという点は、何とも瞑想修行に重きを置く森林僧院らしい一面だ。


森林僧院によっては、“行事”そのものを極力行わないところもあり、年中参拝者が少なく、静謐を保っているお寺もあるほどだ。



タイの仏教行事の本質的な部分は、「徳を積む」ということであり、実に積徳が中心であるということがよくわかるものとなっている。


日本で“お祭り”というと、賑やかなもので、山車や神輿が練り歩き、屋台や出店を楽しむものというのが定着しているが、本来的に言えば、それらは“おまけ”の部分である。


神社では神事が行われており、寺院では法要が営まれている。


寺院で言えば、法を聴くというのがその中心の場合もある。


その中心部分こそが行事の核たる部分のはずだ。


日本では、どうも“おまけ”の部分のほうが大きく発展し、中心になってしまっている感があるが、長い歴史の中で変遷し、発展してきたものなのだろう。


それはそれで、意味のあることではあるかと思う。


それぞれの祭礼や法要の起源や意味などを深く尋ねてみるのもよいかと思う。



近年は、ライブ配信でタイのお寺の様子や行事の様子などが生中継されており、いつでも気軽に見ることができる。


ライブ配信を見ながら、タイに思いを馳せる時間もまたよいかと思う。



直接足を運ぶのと同じにはならないまでも、ともに徳を積むことができると思っている。


日々、精進していきたい。




(『マーカブーチャー(万仏節)に思う』)






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