タイ佛教修学記

佛法を求めてタイで出家した時のこと、出会った人々、 体験と学び、そして心の変遷と私の生き方です。


礼拝

阿羅漢であり正等覚者であるかの世尊を礼拝いたします

ナモータッサ ・ パカワトー ・ アラハトー ・ サンマー・サンプッタッサ(3回)


2020/10/09

オークパンサー(出安居)の季節


タイでは、オークパンサー(出安居)の季節である。


オークパンサーというのは、お寺に3ヵ月間籠って修行に励む期間であるパンサー(安居)の終わりを告げる日のことだ。



2020年のオークパンサーの日は、102日。


仏教行事に関する日にちは仏歴であり、仏滅(ブッダが入滅した年)を基準とする太陰太陽暦のため、毎年、日にちが変動する。


ちなみに、西暦に543年を足すとタイの仏歴になる。


私は、大雑把にオークパンサーの日を「11月にかかることはない」程度に覚えている。



お寺に3ヵ月間籠って修行に励むこのパンサーの期間を比丘として過ごすことが功徳が高いとされていることもあり、カオパンサー(入り安居)前に出家をして、オークパンサー後に還俗するというケースが最も多い。


ゆえに、パンサーの期間中は、どこのお寺も普段よりたくさんの比丘たちが止住しており、大変賑やかである。


パンサーの期間が終わると、ほとんどの比丘たちは還俗し、一人前の成年男子となって、それぞれの家庭や社会へと帰っていく。











青木保著『タイの僧院にて』によると、出家の同期だったメンバーのことを「カナ・ディアオカン(คณะเดียวกัน)」と言って、同じお寺の同じ宿舎で、同じ修行期間を過ごした比丘仲間は、特に仲良くなり還俗後も親しく付き合うことがあるのだそうだ。


「カナ(คณะ)」というのは、タイ語で、グループ・集まり・学部・セクションなどの意味で、「ディアオカン(เดียวกัน)」というのは、同じ・同一のという意味である。


すなわち、同じグループ・同期といったほどの意味になろうか。


日本風に言えば、「同じ釜の飯を食った仲」あるいは、“貴様と俺とは・・・”の「同期の桜」といったところだ。



大きな寺院の場合、僧侶の居室の建物が何棟も並んでおり、日本で第何号棟と呼ぶように、建物ごとにカナいくつと番号がふられている。


そのようなところから、同じ屋根の下で共に過ごした仲間だという意味で、このように呼ぶのではないだろうか。



さて、私の場合は、出家生活の大半を森林僧院で過ごした。


ゆえに、相部屋で過ごすことも、大きな僧房で過ごすこともなかった(知人の僧房に宿泊させていただいたことはあるが。)。


当然のことながら、一緒に出家した仲間や寝起きをともにした仲間、修行期間をともに過ごした仲間というのも誰もいない。


一人出家をし、一人還俗をした。



その意味では、少々寂しい気もしないではないが、そもそもそうした交流を目的としてタイまで来たのではないから、そのようなことは全く構わない。



さて、オークパンサーを終えると、森林僧院内で修行をする比丘の数は、一気にその人数が減ってしまう。


ある者は、還俗する。


ある者は、そのまま比丘を続ける。


またある者は、自分がいた元のお寺へと帰っていく。


そう、他のお寺からパンサー期間中だけ別のお寺へと修行に出る比丘もいるのである。



何年も比丘をやっているようなベテラン比丘しか残らず、それこそ閑散とした寂しい限りの状況になってしまう僧院もあるのだが、私としては、むしろそのほうが瞑想修行の環境としては都合が良い。



私には、修行仲間の比丘もいなければ、同期の比丘もいない。


しかし、それでいい。


人づきあいや特定の者と親しくなることも大切ではあるが、そこにこだわる必要は全くない。



ブッダが出家した時には、同期の出家者はいただろうか。


ブッダも一人で瞑想を実践したのではなかったか。


友と親しくなり、恩愛の情に憑りつかれてしまってはならない。



私は、ブッダに憧れてタイまで来たのだ。


ブッダと同じ道を歩みたくてタイで出家をしたのだから。



今日も瞑想をしながら、オークパンサーを迎えたタイのことに思いを馳せつつ、そのようなことを考えていた。



(『オークパンサー(出安居)の季節』)









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