タイ佛教修学記

佛法を求めてタイで出家した時のこと、出会った人々、 体験と学び、そして心の変遷と私の生き方です。


礼拝

阿羅漢であり正等覚者であるかの世尊を礼拝いたします

ナモータッサ ・ パカワトー ・ アラハトー ・ サンマー・サンプッタッサ(3回)


2021/09/19

帰国の飛行機の中にて


ふと、バンコクから帰国する際のことを思い出した。


私がタイから帰国した6月24日のことである。


もう何年前になるのだろう・・・


なぜだかわからないのだが、不思議なことに、あの日、あの時、あの飛行機の中での出来事を、鮮明に記憶しているのだ。



サティを保つとは、なかなか難しい。


瞑想修行に励んできたとはいえ、聖者でもない凡夫である私は、感傷的になることもあれば、もの悲しい気分に襲われることもある。




私は、実家で寝たきりの生活を送っている父親の問題を整理するために帰国を決めた。


そう、父親の介護のために、タイでの学びに区切りをつけて、日本へ帰国することを決意したのであった。



本当は、もっとタイにいたかった。


もっともっとたくさんのことを学びたかった。


それが私の本音だったのかもしれない。



自分でも、自分の本心がわからなくなってしまうほど、葛藤し迷った末の決断であった。










バンコクの空港でのことだ。


当時は、まだスワンナプーム国際空港ではなく、ドンムアン空港だった。



その日のことは、はっきりと覚えている。


タイで過ごした最後の夜は、フアランポーン駅のすぐ前にある安宿で過ごした。


そして、当日、フアランポーン駅から列車でドンムアン空港へと向かった。




搭乗手続きを済ませて、帰国便に搭乗。


いよいよ帰国する飛行機が空港の滑走路を勢いよく走り出し、離陸し、飛び立った。



嗚呼・・・。



あっという間に、眼下にバンコク周辺の広々とした景色が広がった。


もう、私は、これでタイを離れるんだ。



右も左もわからなかったタイ。


初めてタイに降り立ったあの日のことが走馬灯のようによみがえってきた。



どこの馬の骨だか知れない、タイ語もろくにしゃべれない日本人である私を、笑顔で迎え入れてくれたたくさんのタイの人たち。


そして、出家までさせてくれて、私を育ててくれたお寺の方々。


苦労の末に出会うことのできた先生。


日本へ帰国してしまったら、もう二度とタイへは来れないかもしれない。


もう二度とタイのみんなとは会うことができないかもしれない・・・。



そんな思いがさらに私の心を締め付けたのでした。



・・・その時の直感は、正しかったのかもしれない・・・



いまだに、日本へ帰国してから、一度もタイの地を踏んでいない。


ただただ、日本の地からタイでの思い出を懐かしんでいるだけだ。



お世話になった方々のあたたかな顔が浮かんできた。










同時に・・・



何ひとつ成し遂げることができなかった自分自身への悔しさと情けなさのようなものが胸の底からこみ上げてきた。


懐かしさなんかではない。


情けなさだ。



まるで堰を切ったかのようにいっきに思い出されて、もうあと一歩のところで涙が溢れてくるところだった。


日本へと向かう便だけあって、日本人が多く搭乗しているようだ。


耳をすませば、あちらこちらから日本語での会話が聞こえてくる。


機内で私の席の隣に座ったのも日本人だった。


とても明るそうな女性であった。


何かを話しかけてきたことは覚えているのだけれども、それ以外はさっぱり記憶がない。


話しかけてくれるのは大変ありがたいのだが、大層そっけない表情をしていたことだろう。



そもそも、全く耳に入ってこない。



申し訳がないのだが、明るい話題にのれるほど私の心は元気ではない。


この複雑な思いは、まさに筆舌に尽くしがたい。


正直な気持ちを吐露するならば、そっとしておいてほしい。


その一言だ。




タイの国へ、
タイで出会った人々へ、

ブッダ・ダンマ・サンガへ、
タイでの学びへ、

タイへ来れたことに対して、
今までの全てのことに対して、

飛行機の窓に広がる
広大なタイの大地に向かって、


心静かにそっと目を閉じて、
感謝の念を捧げたのであった。



おそらく、私の近くにいた人たちには、大変奇異な姿に映ったことであろう。



(『帰国の飛行機の中にて』)





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